日本のケベック研究
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5 廣松 勲の主要業績: 論文が掲載された書籍 1.「フランス語圏カリブ海域におけるクレオール文学の問題機制」,『ポストコロニアル批評の諸相』,岩田美喜・竹内拓史編著,東北大学出版会,2008年,233-263頁. 2. « La correspondance avec les éditeurs : histoire éditoriale des œuvres d’Émile Ollivier », dans Émile Ollivier : un destin exemplaire, Lise Gauvin (dir.), Mémoire d’encrier, 2012, pp. 119-142. 主要論文など 3. « Mélancolie postcoloniale : relecture de la mémoire collective et du lieu d’appartenance identitaire chez Émile Ollivier et Patrick Chamoiseau », thèse doctorale déposé à l’Université de Montréal, 2012. 4. « L’énigme de l’enracinement dans La Brûlerie », 『ケベック研究』第4号,AJEQ,2012年,54-71頁. 5. « Espace et identité : la description spatiale chez Émile Ollivier », dans Revue internatinale de l’ACEQ, Association coréenne des études québécoises, No.6, 2012, pp. 53-90. 6. 「パトリック・シャモワゾーにおけるトランスカルチャー:記憶の伝達から伝達の記憶へ」,『Nord-Est』第6号,日本フランス語フランス文学会東北支部,2013年,78-96頁. 7.「文学研究における社会」,『総合政策学のための思想研究』第1号,慶應義塾大学総合政策学部・堀茂樹研究会,2013年,24-29頁. インタビュー要旨 1. まず簡単に自己紹介いただき、これまでやられてきたご研究の主要テーマは何かお話しください。 法政大学国際文化学部で専任講師を務める廣松勲と申します。現在は、主に「フランス語」と「フランス語圏の文化」を教えております。研究分野はフランス語圏文学、特にフランス語圏カリブ海域の小説とハイチ系ケベック移民文学の小説を中心に分析を行っています。 2006年から2012年にかけては、リズ・ゴーヴァン名誉教授のご指導の下、モントリオール大学のフランス語文学科の博士課程において研究活動を進めました。大学や学部の雰囲気だけでなく、街の雰囲気も、フランス語圏の文学作品を研究するためには非常に有意義なものでした。 2.現在のご研究の具体的なテーマと結論についてご説明いただけますか。 博士論文は、2012年にモントリオール大学に提出しました。この論文では、「植民地化以後のメランコリー」というテーマから、カリブ海域文学とケベック州のフランス語圏移民文学を分析しました。彼らの作品の多くでは、植民地化という出来事や脱植民地化の過程を要因として、主人公や語り手が何らかの喪失状態に苦しむ姿が描かれます。そこで、分析対象をパトリック・シャモワゾーとエミール・オリヴィエという2人の作家に限定した上で、そのような喪失状態、すなわちメランコリーを克服するために、いかなる方法が提示されているのかを論じました。 現在は、このような博士論文における分析対象・方法を再考しながら、他のフランス語圏文学の分析に取り組んでいます。 3.今後のご研究の課題や抱負についてお聞かせください。 今後は、さらにフランス語圏文学における「トランスカルチャー」というテーマに注目する予定です。「トランスカルチャー」とは、「マルチカルチャー」や「インターカルチャー」とは異なり、「文化」という概念の固定性や同質性を問題にした上で、文化接触により新しい文化が生成する過程に注目する視点です。より包括的にトランスカルチャーの描かれ方を考察するため、現在はパトリック・シャモワゾーとエミール・オリヴィエに加え、ラファエル・コンフィアンとダニー・ラフェリエールも分析対象としています。 --------------------------------------------------------------------------------------------------------
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