日本のケベック研究
29/52

29 仲村 愛の主要業績: 発表論文: 1. 2013年、「英語系カナダとフランス語系カナダの分断:歴史的生成と二元論」『教養デザイン研究論集』6、1-20頁。 2. 2013, « Des problèmes de l’interculturalisme au Québec, Études québécoises: Revue internationale de l’ACEQ », 7, pp.7-21. 3. 2012年、「ケベック州『和解』の原理:ブシャール=テイラー報告を読む」、『ケベック研究』4、90–106頁。 4. 2012年、「国民統合と多文化主義:カナダ多文化主義を事例として」、『社会科学研究所紀要』50(2)、337–355頁。 5. 2011年、「ケベック州『妥当なる調整』に関する試論:多文化社会における正義の観点」、『教養デザイン研究 論集』2、1–19頁。 インタビュー要旨 1.まず簡単に自己紹介いただき、これまでやられてきたご研究の主要テーマは何かお話しください 明治大学大学院教養デザイン研究科博士後期課程4年目の仲村愛と申します。現在はパリの社会科学高等研究院に在籍しています。日本におけるケベック研究第一人者でいらっしゃり、昨年ご逝去された小畑精和先生のご指導のもとでこれまで学んで参りました。私の研究テーマはケベックのインターカルチュラリズムと呼ばれる政治イデオロギーです。これまではケベックのネイション意識に起因する諸問題ついて研究を重ねてきました。 2.現在のご研究の具体的なテーマと結論についてご説明いただけますか。 私の現在の研究テーマは、ケベック州のインターカルチュラリズムを現代におけるネイション統合のあり方としてモデル化する可能性を理論的に模索することにあります。 ケベックのインターカルチュラリズムは、フランス語を中核としながらケベックに住むすべての市民をケベック人として統合しようとする思想です。近代国民国家の伝統的なあり方が崩れつつある現代において、ケベックのインターカルチュラリズムは新たなネイションのあり方を提示しているのではないかと私は考えています。 3.今後のご研究の課題や抱負についてお聞かせください。 私の問題意識の根底には、社会の文化的民族的多様性を肯定的に承認しながらいかにしてネイションを統合していけるだろうか、という問いがあります。ケベックのインターカルチュラリズムは、ひょっとするとこの問いに対する解の一つになるのではないかと私は期待しています。インターカルチュラリズムの先行研究をみますと、この議論はシティズンシップ論の観点から論じられることが多いです。しかし、シティズンシップ概念に内在する普遍性にも拘らず、インターカルチュラリズムはケベック・カナダの歴史的文脈を抜きにすると議論は成り立たなくなってしまうように思われます。そこで、歴史的事情から正当化する論理構造とはいったん距離を置いて、今後は比較研究的な観点から考察したいと考えます。 --------------------------------------------------------------------------------------------------------

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer10.2以上が必要です